2012年11月10日土曜日

安全網がないということ。

 ある著名な活動家と科学者が出版した書籍を読んだ。その中でとても共感できることがいくつかあった。

 まず、日本ではもう革新的なイノベーションが長らく起こっておらず起こる気配もないことが、ものづくり大国として東アジアを牽引してきた国家としては非常に危惧されるところである。その理由のひとつとして、日本的倫理観(というか教育というか)が高度経済成長を通してよからぬ方へ歪曲してしまったことが挙げられるという。簡単に言うと良い学校へ入って、良い会社へ入って、穏便に人生を送ることが良しとされた社会風潮が、全体的な社会のレベルを下げてしまっているという。その通りだ、挑戦することを抑制された環境では何も生まれはしない。せいぜい自慰行為に耽ってその憂さを晴らす程度で満足してしまう。

 そして、若者の就職難やホームレスの増加について。「あの人はがんばらないから」とか「みんな歯を食いしばってやってるんだ」、「きっと何かに絶望して無気力になったんだ」という精神論ではもう回避できない惨状が現実として広がってきているのだ。なぜ頑張れないのか。それは、「それを頑張れるだけの自分を支えてくれる何かが欠乏しているから」なのだという。人によっては友達だろうし、家族だろうし、お金で買えない人間生活で必要な何かが決定的に欠乏した人たちが増えてきた結果、そのような惨状が拡大しつつあるという。ここ数十年で生活のあり方が変化し、それに伴い家族のあり方も多様化し、複雑な家庭環境で過ごしていく中で、人間として最低限必要な人間関係を上手く保つ事ができなくなってしまった人は、どれだけ生活保護を受給しても、人間関係を上手く築けないがために生活が破綻してしまうことも少なくない。人間の生活は、お金だけで成り立つものではないのだ、ということだ。

 そのために、著者はパーソナルサポートという取り組みを通して、就業の支援だけでなく、お金以外で人間として必要なものを得られる場を提供し、誰もが幸せに暮らせる社会の基盤を作ることに尽力しているとのことだった。

 僕がこれを読んでブログを書きたいと思ったのは、何も内容に共感したからだけではない。これこそ音楽だの芸術だのの発展を妨げている障害であり、芸術はその「お金以外で人間として必要なもの」に匹敵するものではないかと思ったからだ。

 日本でも芸術家として常に前を向いて、過去の自分と対峙し、新しいものを創りだそうとしている人は、いるにはいるのだがそう多くはないように思える。僕個人の感覚としてはむしろ、社会のニーズにあわせて、自分の創った物を摺り合わせていくという、芸術の商業化が進んでいるといった印象を受けている。これは、社会が芸術を軽視し敬意を払わなくなったことの結果だと思っている。仕方なく芸術家達は社会に受けいられやすいものを作品として発表し、それを芸術と思って育った若者はお金を得るために芸術家を目指す。結果、本来高尚であるはずの芸術は、万人の目にすんなりなじむいわば「あってもなくてもいいもの」に成り下がった。

 これがもし、芸術家目指す万人を奨励する制度がしっかり整備されるようになったとしたら、気兼ねなく制作に打ち込める環境を無償で与えられたとしたら?芸術はもっと人々の近くにあるはずだし、もっと人々の生活は鮮やかになるはずだろう。このことは音楽にも言える事だ。どのジャンルの音楽だろうが、新しい作品はいずれ次の時代の標準となって人々の心を癒す。それこそ、「お金以外で人間として必要なもの」として人々が何かに挑戦するときに励ましてくれるものになるかもしれないし、それがきっかけで産まれたものは、より私達を豊かな生活へ導いてくれるかもしれない。

 こんなことを思ったから、バンドのブログに書こうと思ったのだ。皆様、お久しぶりです。寒くなってきましたね。

 次回ライブは、11/27(火)下北沢ERAにて。恐らく今年最後のライブになるかもしれません。

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ERA presents CREATING IMAGES

blaudrops
How to count one to ten /
/TRACK /nico /blaudrops /she,in the haze /frameworks /duludulu /

17:30 Open / 18:00 start
1800yen (adv.)
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 前回のライブより、僕は鍵盤を弾いています。まだまだ練習中なので大きな声ではいえないのですが、今まで練習してきて「なんでもっと早くに鍵盤をはじめなかったのだろう」と思うことが多々あります。それくらい、楽しいしアイデアが湧く。ギターも素晴らしい楽器だし、楽しいからこれかも弾き続けるけど、今後鍵盤は多用すると思います。考えてみれば、自分が尊敬するギタリストは思いつかないけど、ピアニストは何人かすぐに思いつく。好きな作曲家もピアニストが多いしな。何にせよ、音楽が好きでよかったと思える生活を送れて幸せだなと思えているのだから、この生活に感謝しなければと思います。


えーじ

 

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